ゆるやかdead

おかしな人生。悪い意味で。

漫才師が主人公の小説って、めっちゃ面白くないっすか

 はじめに

 ようやくバイトを始めたものの、時間を安く切り売りしているという感覚が強く、「その程度の値札を付けられる人間になったんだなぁ…」という実感にぶっ殺されそうな今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。私はもうダメです。

 先日、ピース又吉の新作「劇場」を読んだのですが、正直面白いと思えませんでした。前作の「火花」がめちゃくちゃ好きだったので期待しすぎていたのか、漫才師の出てくる小説をただただ好きなだけだったのかどちらかです。そんなわけで(?)、漫才師が主人公の小説を3つ紹介したいと思います。

 ものの見事に三日坊主となってしまったこのブログ、なんとか続けていきます。今回は、漫才師が主人公の小説ってちょーおもしれー というお話。

 

 火花/又吉直樹

f:id:yaananisa4:20170528112156p:plain

 又吉直樹の処女作であり、芥川賞作品でもある「火花」最近読んだ小説の中でもトップクラスに面白いと思っています。

 若手お笑いコンビ・スパークスの徳永を通して語られるこの物語には、「笑い」を追い求めることのカッコよさがぎっちり詰まっています。「笑い」という不明瞭で評価の基準さえ曖昧なものを、この世で一等価値があると信じること。他の全てを投げうって、ただそれだけを探求すること。それができる人間がどれだけいることでしょう。徳永が心の底から憧れるお笑いコンビ・あほんだらの神谷は、それを地でいく芸人です。

 この物語は基本的に、師弟関係である徳永と神谷のエピソードで構成されています。突き抜けた奇人である神谷と、それに憧れつつもそこまで振り切ることのできない徳永。徳永はコンビニのバイトで糊口をしのいで小規模なライブでネタをかける毎日の中で、少しずつ評価されていきます。しかしながら、バイトをせずに消費者金融と女の金で飲み歩き、笑いだけを信じて追い求めている神谷はいつまでも変わりません。

 ただ、神谷という男はカッコいいんです。どこまでいっても信念を曲げず、一時的に社会に負けたとしても、また立ち上がって歩き続けます。社会に折り合いをつけながらも、胸を張って生きていく徳永との対比が切なくもあり、変わらないことの難しさを感じさせます。

 作者がお笑い芸人ということもあって小さな劇場の独特な空気感や、お笑いを続けること、やめてしまうことの難しさなどが高い熱量を持って描写されています。肌で感じた現実だからこそ、ここまでの表現ができるのでしょう。見方によって色々な意見のある作品だとは思うので、未読の方はぜひ。

笑う招き猫/山本久幸

 

f:id:yaananisa4:20170527204201p:plain

 女性お笑いコンビ「アカコとヒトミ」のツッコミ担当、ヒトミの視点で描かれる物語です。売れない芸人、そして女性であることの悲哀や歓びが実直に表現されていながら、爽やかな読後感がステキな作品。

 この作品の魅力として挙げたいのは、リアルな空気感です。物語に登場する人々にはそれぞれの生活があり、欲があり、諦めがあります。綺麗事で塗り潰すことのできない、低俗で醜悪な現実が突き付けられます。だからこそ、その中にあるひとつまみの幸せがはっきりとした輪郭を持って感じられるのだと思います。

 そして、サバサバしたガサツとさえいえるノッポのヒトミと、お嬢様でとことん真っすぐな性格なアカコ(体系は豆タンク)の関係性が面白い。作中で描かれるネタがしっかり作られているのもおすすめしたいポイントです。経済的な環境の違いからくる摩擦もありながら、お互いの事を大切に思っていて、でも不器用なふたりは様々な出来事にぶつかっていきます。

 物語の冒頭、緊張でガチガチの初ライブのあとに安い居酒屋で行われた打ち上げの会場で、冷えた里芋の煮つけと半解凍の刺身をビールで流し込むヒトミ。くだらない芸人に、つまらないセクハラを受けて本気の右ストレートを見舞うアカコ。そんな彼女たちがどんなところに、どんな想いに行き着くのか。是非読んでみてください。

THE MANZAI/あさのあつこ

f:id:yaananisa4:20170527231718p:plain

 僕が小説を読むきっかけとなったのが、あさのあつこの「バッテリー」(ジャンル的には児童書になるのかな)なのですが、その次に読んだあさのあつこ作品がこの「the manzai」で、バッテリーと並んで何度読み返したかわからないくらい好きな作品です。

 そんなことはさておき、あさのあつこが描く少年少女がいかに美しく活力に満ち溢れているかについて話しましょう。これは作品全般にいえることですが、多感な年ごろの子供たちに対する大きな愛が感じられる、というのがあると思います。

 当たり前の話ですが、多くの子供たちは学校というコミュニティと、親をはじめとする数少ない大人との繋がりの中で思春期を迎えます。たとえば学校の友達から言われた棘のある言葉や、悪意のある態度。それだけで自分を全否定されたような気持ちになるんです。世界は広い、なんていう当たり前の理屈すら飲み込むことが難しい、多感な年ごろの彼や彼女は。自分の全部を使って物事にぶつかって、100%の感情を剥き出しにすることは、ある特定の時期にしか出来ないと思います。だからこそ、混じり気のない純粋な激情は本当に美しい。あさのあつこは、そういった熱量の高い、生の感情を表現するのが抜群に上手いのです。

 そしてこの作品の主人公である瀬田歩は、複雑な家庭環境を持った繊細な少年です。大いに悩み、失敗して、傷ついて、成長します。知識として知っている理屈とコントロールできない感情がせめぎ合う、若く瑞々しい心の内が描かれていて、読みすすめていくうちにこの少年が愛おしく思えてきます。仲間との絆として、自己表現の方法として、純粋な表現者として漫才をする少年の姿には感じるものが絶対にあるはずです。ぜひ読んでみてください。

 おわりに 

 なんとなく書き始めたものの、内容が全然まとまらなくて四苦八苦しました。好きなものについて書くのは楽しいけど難しいですね。もうちょっと文章力が上がったら書き直します。ただ、上述の3作品はめちゃくちゃ面白いと思っているので、未読の方はぜひ読んでみてください。

 

 

 ちなみに、この記事(約2500文字)を書くのに2日かかりました。殺してくれ。